イスパニア入国

極端だ

前夜は結局23時半頃には寝たものの、0時頃になってから、祭の最後とばかりに歓声がどっとあがり、ぼくの泊まっている部屋というのはまさにその行列の通る道沿いにあるものだから、うわー、これは寝ることができるのだろうか、という心配を抱きつつ、就寝。
そして、馬鹿は極端に走るもので、今度は6時45分の目覚ましで目を覚まし、朝食もとって、8時にはチェックアウト。駅には20分ぐらいもかかるかなあ、などと思っていたが、10分ほどで到着。8時45分発までしばし待つ。まずはイルン(Irùn)へと行くのだが、ここまででフランス国鉄SNCFの管轄は終わり。ここからは、スペイン国鉄RENFEの管轄に移るのである。イルン行きのTGVに乗り込んだはよいが、自分の乗るはずの24号車からちょっと離れた26号車に乗っていた。動き出したので、じゃあそのまま車内を通ればよいよなあ、などと思ってゆくと、なんと25号車と24号車の間は通れないのであった。幸い、次の駅までの間は珍しく短く(この行程でも、たまたま次の駅は10分弱で着いたが、あとは20〜30分間隔という状態だった。)て、そのまま次の駅で急いで乗り換えたのだが、2等車といっても別段劣るふうでもなく、ゆったりしたものだった。
イルンに着いてから、駅で1時間ほど待つとパンプローナ行きの電車が到着。イルンの駅には、切符の自販機がないようだったので、小さいからないのか、それともスペインではあまりないのか、そのあたりよくわからなかった。とりあえず、昨年の夏はバス移動も多かったし、バスというのも一つ手ではあるなあ、と考えて、保留。パンプローナ行きの電車を待っている間に、結構悪化してきたのが風邪の病状。どうも、昨日足腰の疲れがどっと出てきたのは、風邪のせいであるようだが、今回の風邪は日本だといつも漢方薬入りの風邪薬で治す、お腹にくる風邪であるようで、いつもの頭が痛いからパラセタモールを買っておけばよいや、というものではないようだ。パンプローナ行きの電車の中で、いよいよ弱ってきて、本も読まずにひたすらi-Podの曲を聴いている、という状態。
ホテルの場所もわからなかったので、タクシーに乗って、ホテルまで連れて行ってもらう。イスパニアのタクシーは3ユーロくらい、つまり450円ほどからで、ホテルACシウダッド(AC Ciudad de Pamplona)まではおよそ6ユーロほど。ちなみに、今回泊まるホテルの中で一、二を争う料金であるが、かなりゴージャスなホテルではあって、まあこの値段も無理はないよな、という感じではある。ただ、正直、あとあと泣きを見るのだろう。

スペインの街並み

寂しい闘牛場
パンプローナの旧市街からは外れた場所にあって、旧市街まで歩いて15〜20分ほど。ロケーションとして観光にはいまひとつな感じではある。とりあえず、ホテルの人に言われた通りに歩いていって、城址公園(Parque de Ciutadella)を通り抜ける。パンプローナを歩いていて思うのが、この街はずいぶんと予想していたのと違うなあ、ということである。サン・フェルミン祭についてのヘミングウェイの記述とかを見ていると、どう見ても山村に毛が生えた程度のところ、という感じなのだが、立派に近代的なビルディングの建ち並ぶ都会、といった風情である。まあ、これは実際には旧市街地に入れば淡れてゆくのだけれども。
だいたい、ホテルを出たのが13時半頃であったのだけれども、旧市街地に近づいてゆくにつれて、一層確信に近づく印象があった。それは、『なんだろう、この休日みたいな街の様子は……』というものである。バール(Bar)やカフェ(Café)は開いているものの、あとは軒並み閉店中。でも、今日はさすがに月曜日。ふと思い至ったのが、シエスタである。実際、営業時間を見ても、xx:00〜14:00とかxx:00〜13:00という表記があって、その下に16:00〜xx:00とか18:00〜xx:00などとシエスタ後の営業時間が書かれている。街に溢れる観光客は行く場もなく、強い陽射しも避けたいがため、バールに群をなす、ということになる。
一軒、途中で入ろうか、と思ったがあまりの込み具合に止めて、そのまま闘牛場へ。闘牛場も当然、やっていないが、それだけでなく、どうもシーズン・オフに入ってしまった風情で、少し破れかかったポスターが空しい感じを漂わせている。ぐるりと闘牛場を周ると、ヘミングウェイの像があったりして、さすがにこの街とヘミングウェイも切っては切れない仲になっているようだ。
その、ヘミングウェイが書いた『日はまた昇る(The sun also rises)』に登場するカフェ・イルーナに行ってみた。当然、観光客でごった返していた。最初、ぬぼーっと行列に加わっていたが、よくよく考えると自分は一人で来ているのだから、カウンターの止まり木に座っていればよいではないか、と気づく。カウンターに座って、ビールとおつまみ、そしてワインをいただく。もう少し何かいただけばよかったのだが、波打つ体調では、調子に乗るわけにもゆかない。
スペイン語とバスク語
このカフェ・イルーナはカステッロ広場(Plaza del Castello)というところに面してあり、そのほかにもたくさんのカフェ・バールが軒を連ねている。人々は、ぼんやりとシエスタの時間を過ごしている。そういった中で、1時間ほども過ごして、また行動開始。旧市街をぽつぽつと歩いてみるが、ただでさえややこしいうえに、地図を生半可に見ただけで歩いているものだから、方向違いも甚だしく、大聖堂を目指したらナヴァラ博物館に遭遇したりする。ちなみに、このナヴァラ博物館は今日は月曜なので休館。そういえば、ナヴァラで思い出したが、パンプローナの街並みでふと気になったのが、通り名の表示がスペイン語で書かれていて、その下にもごちゃごちゃと書いてあるのだが、これは実はどうもバスク語であるようだ。ちょうど、アイルランドで英語の通り名表記の下にエール語が書かれていたようなものだろうか。
アルガ川沿いには、パンプローナの街の古い城壁が残っている。残念ながら、川というよりは、向こうに広がる新興住宅地のようなものばかりがふと目にはとまったのだけれども、それでもピレネーらしき山々が広がるのが見えるのはなかなか雄大。そうやって城壁沿いに進んで行って、大聖堂に辿りつく。
素朴な彫刻
大聖堂(Catedrale y Museo Diocese)は博物館と一緒の入り口になっていて、こちらは実はシエスタがなかったのである。ちょっと損した気がしないではない。何風というのではないのだが、聖堂の中は修道院の中庭のようになっていて、そのあたりの雰囲気というのは、南仏だとかイタリアにも共有の、南方ヨーロッパらしいところかな、という気がする。聖堂の中に入ると、彩色された聖人画、聖人像が各礼拝堂ごとにたくさんある。とくに、キリスト像は痛々しい無数の傷跡を示すものであったが、それでなくとも、全体にやや稚拙な技巧と、そして彩色されているために妙なリアリティとでもいうようなものが混在しており、不思議な感覚を覚えた。が、ふと、これは南米だとか東南アジアのキリスト教会などで比較的見るものだなあ、と思った。あれは、別に文化的に混淆した結果というよりは、宗主国の好みがそのまま伝播したと考えるべきであったのだ。印象としては、日本や中国の質素な仏像がイタリア、フランスの石なら石、木なら木の素材を示している聖人像だとすると、東南アジアなどの鮮やかな黄金の仏像などがイスパニアのもの、であろうか。うーん、何の根拠もないけれども。
大聖堂の祭壇の前には、地球の歩き方だとカルロ4世とその妃の墓、とあるのだが、ぼくが見た感じではガルシア7世とサンショ7世の墓ではないのだろうか、と思ったのだが、そのあたりよくわからなかった。街中にも、カルロス高貴王とか、サンショ大王、サンショ・エル・フエンテの像など、割とナヴァラ王としてどうなんだろう、とよくわからないあたりが彫像では見かけた。
大聖堂の博物館では、特設展的に聖フランシスコ・ハビエル(St Francesco Javier)、つまり所謂ザビエルの展示を行っていた。というのも、彼はナヴァラの守護聖人であるからなのだが、このパンプローナから小1時間ほど離れたハビエル城で生まれたナヴァラ出身の人物である。そうしてみてみると、ハビエルの布教活動というのは非常に幅広く、精力的なものだったのだなあ、と唸ってしまうものであった。山口や平戸のハビエル記念の像の写真なんかが展示されていると、やはり日本人としては嬉しくなってしまう一面はある。ただ、我らのハビエルさんではなくて、結構みんなのハビエルさんなのであった。
大聖堂から帰る頃に、ようやく店が復活しはじめ、そうなると、ああ確かに平日なのだなあ、というぐらいに店はやっている。びっくりするほどだ。恐るべし、イスパニア

根本的な問題

夕飯を食べに行って、なんとなく今日一日の間回避しつつあった問題が、明確になったなあ、と思った。夕飯を食べたのは近くのバールで、雰囲気もよいところなのだけれども、一人で座席について、さあメニューを見るか、と思うとこれが笑っちゃうほどにわからない。店のおじさんが来て、英語で説明をしてくれたから、それに従って注文したけれども、これは結構困ったことだ。今まで、イスパニアに手を出してこなかったのも、この言葉という問題で、結局やらなきゃやらなきゃと思っているうちにイスパニアに来てしまったわけだ。フランス語もイタリア語も、僅かながらわかるのだけれども、スペイン語は僅かながらもわからない。これは困ったことだ。
ということで、その日使った単語とかフレーズは、少しメモしておくことにしよう。
こんにちは Buenos dias !

こんにちは(くだけた表現) Hola !

さようなら Adiòs

ありがとう Gracias

お願いします Por favor

お勘定をお願いします La cuenta, por favor

ビール Cerveza

赤ワイン Vino tinto